Piano Knowledge

クラシックピアノの曲について、作曲家、曲の背景等を踏まえて解説していきます。

ラフマニノフ 前奏曲『鐘』いつ作られた?名前の由来は?作曲家の歴史とともに解説

こんにちは。今回はラフマニノフの最も有名なピアノ曲の1つ、『鐘』について、作曲者の歴史的背景を踏まえて曲の成り立ち、いつ、どうやって作られたのか、またおすすめのピアノニストの演奏を紹介していきます。

セルゲイ・ラフマニノフ

ラフマニノフの生い立ち

ここではラフマニノフが幼少期にどのような環境で育ったのか簡単に解説します。

セルゲイの誕生

1873年4月11日、ロシア帝国ノヴゴロド州セミニョヴォに生まれました。幼少期をオネグで過ごす。自然がとても豊かな場所で多感な時期を過ごしました。

両親について

父も母も裕福な貴族の家系出身。しかし、経営がうまく続かず、セルゲイが産まれるころにはかなり衰退していた。その後破産し、父親が家を去りました。

『鐘』ができるまで

ペテルブルグ音楽院時代

音楽の才能を認められ、奨学金でペテルブルグ大学院へ入学しました。しかし、素行が良くなく12才の頃には全教科で落第をしてしまいました。思い悩んだ挙げ句にモスクワ音楽院へ転入させることにしました。

モスクワ音楽院時代

セルゲイの音楽がチャイコフスキーらに認められました。それぞれの師から和声、対立法、正教会聖歌などを学びました。

そして、1891年にピアノ科、1892年に作曲科を卒業し、同年のモスクワ電気博覧会で『鐘』を初演しました。

『鐘』の解説

曲名について

この曲の正式名称は、

前奏曲 嬰ハ短調 Op.3-No.2』

です。
この『鐘』とは自分で名前をつけたのではなく、人々に知れ渡り、この曲のことを『鐘』もしくは『モスクワの鐘』と呼ぶようになりました。
実は良くあることで、ショパンの『革命』や、ベートーベンの『運命』なども同じように名付けられています。

ちなみにこの曲は『幻想的ピアノ小曲集』に収録されています。

曲の構成

嬰ハ短調
Lento→Agitato→TempoⅠ(pesante)
の三部構成です。

Lento(レント)

冒頭はラ、ソ#ド#にfffとさらにアクセントが付く強烈な音から始まります。
その後pppになり、右手と左手が3度離れた和音を展開していきます。

Agitato(アジタート)

Agitatoでは三連符の分散和音で進んでいきます。圧倒的な半音階の中に美しい旋律が流れます。その後、ff、fffと音が強くなり、焦燥感を思い立たせるような下降のアルペジオで絞まります。

TempoⅠ(テンポ・プリモ)

TempoⅠでは、pesanteの表記があり、強弱記号がfffというのもあり、非常に重厚感があります。メロディーとしてはLentoのモチーフですが、音の数が多く壮大なスケールで演奏されます。

最後は徐々にdiminuendoがかかり、後に書かれるピアノ協奏曲第2番 第1楽章』の冒頭を思わせるような音の形で終わります。
調べてみたところやはりここがモチーフになっているようです。

オススメの演奏家

最後に私のオススメの演奏家をご紹介します。リンクを貼っておきますので、是非聴いてみてください。

セルゲイ・ラフマニノフ

https://youtu.be/mXGSfJn3nKQ
まさかのご本人登場です。笑
作曲者の意図がもろに伝わるのでこれは是非一度は聴いてみたい演奏です。

エフゲニー・キーシン

https://youtu.be/SCm9O2KNEX4
男性らしいスケールの大きい演奏です。
和音も非常に繊細で聴き惚れてしまいます。

ウラディミール・アシュケナージ

https://youtu.be/On49OPziAEE
私が大好きな演奏です。
ラフマニノフと同じロシアで産まれというのもあり、愛着というか、真摯にこの曲を受け止めているような感じを受けとります。

終わりに

今回はラフマニノフの中でも有名な曲『鐘』についてお伝えしました。
ラフマニノフチャイコフスキーを崇拝していたこともあり、この曲でも和音の中に優美さを感じます。
また教会音楽を勉強していたからか、半音階などに重厚感も感じさせてくれます。
チャイコフスキーやバッハなどを聴いてからこの曲に戻るとまた新しい発見があるかもしれませんね。